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2010年度 2学期始業式(9月1日) 学校長の話

DATE : 2010/9/8
日程:
2010年09月01日(水)

 みなさんおはようございます。この夏はみなさんご承知のように、暑くて、熱くて、今日も暑い!ですね。多分、日常交わされる会話の中で、暑いという言葉 が1番多かったのではないかと思われます。この言葉なくして生活ができないのではないかというぐらい暑い夏でした。そして、社会現象と言えるほどに頻発し たのが「熱中症」でした。ひょっとしたら、皆さんの周りの人や知り合いの人の中にも「熱中症」になった人がいたのではないかと心配しています。特に、お年 寄りでこの症状にかかった人の中には、重体やお亡くなりになった人もいます。本当に大変な夏、異常気象に見舞われた夏でした。
 それから、もうひとつ大きな出来事が報道されました。100歳以上のお年寄りがたくさん生存していることになっているというのです。この話の不思議なと ころは、「彼(女)らは(生きて)いるけれどいない。いないけれどいる」という点です。150歳を超えている人も生きている(筈だ)と言われています。 いったいこの国の国勢調査や人口統計はどうなっているのでしょうか。
 このようなことを通じて私たちの身の回りを見てみると、日頃当たり前だと思っていること、当然そうなっている筈だと思っていることが、実はそうではなく て、本当は結構不安定なものの中に、或いは暗黙の了解のうちに成り立っているのかもしれない、そんなことを感じました。夏休みが終わって、みなさんが元気 に学校に来てくれたことを何よりもうれしく思います。
 
今日は暦の上では二百十日です。これは立春 ―節分と言えばわかりやすいでしょうか― から数えた日数です。この頃は「実りの季節」です。果物や穀物が実り、収穫できる時季ですね。そして今年は、夏がとても暑かったので、果物は小さいけれど 糖分が多く甘いということです。ですから、桃、葡萄、梨、栗、柿などがとても栄養に富んでいて美味しいということになります。このように素晴らしい季節の 始まり、これが今日の二百十日というわけです。
 同時にこの季節は、台風の季節でもあります。場所によっては「風祭り」というお祭りが行われます。昔の人は常に自然に寄り添いながら、その恵み[恩恵] を受け取り、これに感謝し、一方で自然の驚異に対しては頭(こうべ)を低くして、災いが通り過ぎることを願い、様々なかたちで神や自然を慰撫してきたのだ と思います。
 さてさて、みなさんの今年の夏休みはいかがだったでしょうか。部活動を一生懸命にやった人、必死に勉強に励んだ人、あるいは家族や親類と行楽に出かけて 楽しんだ人、自分の将来や生き方について深く考えた人、たくさん本を読んだ人、映画を観た人もいると思います。いずれにしても、休暇[夏休み]というの は、日常を離れた時間を ―みなさんの場合は学校に通うということですが― 普段とは異なった時空間の中で生活するということは、みなさんにとっては、とても大切なことなのです。勿論、私たち大人にとっても「日常を離れた生活をす る」ことは、新しい自分が生み出されるし、新しい自分の可能性を探ることになる。少なくともそのきっかけになります。そうした意味でも、みなさんがこの夏 休みに体験した[行った]ことはとても大事なことで、今は目に見えないかもしれない、これだとは言い切れないけれども、心の中にはきっと何かが芽を出し て、それが少しずつ成長し始めているのです。わずか1ヵ月余だけれどもこの夏の出来事や頑張りが、君たちの心の中で発芽して、成長を始めています。
 そして「何か」とは、今は確かにわかることは難しいかもしれないけれども、いずれ目に見えるようになります。そのためには、芽を出し始めた苗に、水を やったり、栄養を与えたり、風を当ててやったり、虫を取ってやったり、時々は色や香りにも気を配ったりすることが必要です。さらに大事なことは、みなさん の中に芽生えている「何か」に「方向性」を与えることだと思います。方角を決めてやることです。「こちら側に伸びなさい」「こちらの方角が向いているよ」 と指示を出し、方向性を示してやる作業も、2学期の仕事です。

 時間は確実に過ぎていくものです。これは誰にも平等で不可避なものです。でも、この時間を使うことができるのは、私たち自身なのです。人は若くはなりま せん。どんどん年を取って行きます。生まれた瞬間からそのような宿命なのです。しかし、このことを悲観してはいけません。私たちは、与えられた時間の中で より良く確かに生きていく、そうした喜びを持つことができるのです。どうかこの2学期に目標を定めてください。遅いということはありません。今からでも、 目標は作ることができるのです。こんなことをしたい、あんな風にやりたいと思いを膨らませて、「進む方向」を定めてください。右へ行くのか左へ行くのか、 真っ直ぐ行くのか、うねうね曲がって行くのかそれはわかりませんが、まず目標を定めて、向きを決めることです。次に、足を踏み出しましょう。右からでも左 からいいですから、まず1歩を踏み出してみましょう。その踏み出した1歩を止めないように、少しずつでもいいですから、前へ前へと足を運びましょう。その ための勇気を持ちましょう。進むことを躊躇していると止まってしまいます。止まってしまったものを再び動かすのは、とても大変です。動いているものの方向 を変えるのはそれほど難しくはありません。一度止まってしまったり、後戻りしたものを再び動かすには大きなエネルギーが要るのです。どうか、2学期になっ たのをきっかけに、目標と方向性を定めて、目標に沿った新たな一歩を踏み出す勇気と実行力を発揮していただきたいと思っております。
 
 また、2学期には、勉強だけではなく様々な行事があります。芸術鑑賞会、合唱コンクール、学園祭、修学旅行などが次々とやってきます。ですから、これら の行事に自分をぶつけ、自分を表現する絶好のチャンスの時でもあります。不平とともに後からついて行くだけというのではなく、自分が主体となって、周りを 巻き込み、自分の力を発揮して欲しいのです。失敗してもいいのです。うまく行くことだけが大事なのではありません。みなさんが行うこと[活動]は、ある意 味では練習試合なのですから、その中で自分をぶつけて表現しない限り、得られる成果は小さなものに帰するでしょう。自分をぶつけ、表現する中で、他人との 調和を学んで欲しい。なぜなら、自分を表現するということは、必然的に他の誰かとぶつかるということだからなのです。誰かに迷惑をかけたり、誰かの立場を 制限することになるということです。そのようにして私たちは生きているのです。誰かが吸っている空気は他の人は吸えないし、自分が立っている場所には他の 人が同時に立つことはできないのです。これは厳然たる事実ですが、同時にこれこそが、共に生きるということなのだと思います。ですから、相手が立っている 場所や他の人が吸う空気を大事にしてやらなければなりません。そして、大事にするためには、自分を表現しなければなりません。私はこう思う、こうしたい、 こうしていると言わなければなりません。しかしながら、問題は、相手も同じことを表現し、言っているという点です。この間の調和をどうとるべきなのか。こ こにこそ「大人になる」そして「学ぶ」ということの本質があると思うのです。知恵と賢い行動が必要になる所以です。

 最後に、10月1日についてお話しします。先にお知らせしたとおり、2010年10月1日より、本校は学校法人中央大学の附属校となります。明治41年 に横浜女子商業補習学校として産声を上げて以来102年の歴史を持つ本学園ですが、10月1日をもって新たなスタートをすることになりました。同日には、 これを記念して記念式典を行います。在学中のみなさんにとっては正に記念の年となりますが、どうか新しい学校の創成期に立ち会った生徒として、期待感とと もに、学校の中心としての誇りを持ち、前向きで意欲的な生活を送っていただきたいと強く願っております。

 それでは、みなさんが心身の健康に十分注意して、楽しく充実した毎日を過ごしてくださるよう願いつつ、始業式の話を終わります。